2015/11/25

Dear Rookies この世界で一番大切なのはきみ自身

母親が出版社の集まる神保町でバイトしていたので、よくゴミ捨て場でVogue NipponELLE Japonを拾ってきた。ときどきは空白のページやゲラが混ざっていたりもした。もともとオマセだったわたしは10代前半かその前からずっとこうしたハイファッション誌の愛読者だった。世界の街角のファッションスナップはお気に入りのコーナーで、ショーの合間のスーパーモデルやファッションエディターに混じってタヴィちゃんという少女を発見するたびに、こんな華やかな世界に身を置くおチビちゃんがいるなんて世界は広いや、とため息をついたものだ。当時の彼女の肩書きは<ブロガー>。彼女がStyle Rookieというブログを立ち上げたのは弱冠11歳の時(2008年)。わたしの実家にパソコンが来たのは18歳(2006年)くらいの時で、当時はmixi以外のウェブサイトにアクセスすることがほぼなかったので、彼女がどんなブログを書いているのか知らなかった。

わたしが知ってる謎のオシャレ子供タヴィちゃん

そのタヴィちゃんが大きくなって(でもまだ19歳)、いまアメリカで最も影響力のある文化人の一人になっていたなんてお恥ずかしながら『ヤング・アダルトUSA』を読むまで知らなかった。

こんなに大人になった!女優としてもめきめき実力をつけているらしい

ちょうどRookie Yearbook 4が発売されたところだったのですぐに注文。Rookie Yearbookとは、彼女が主宰するウェブサイトRookieに載った記事の傑作選に書き下ろし記事を加え毎年秋に書籍で出しているものだ。フルカラーのワイド版で手にとってみるとずっしり重く、まさに「おもちゃ箱をひっくり返したような」色彩の洪水のなかに膨大なテキストが詰まっている。ティーンによるティーンのための同ウェブサイトが扱うトピックは「Action」「Work」「Dedication」といった月ごとの大テーマに沿い、ティーンらしくカワイイものへの礼賛は基本としながら、DIYや痴漢撃退法や宿題のヒントといった実用的なもの、さらにジェンダー、差別、暴力といった社会問題など幅広い。実体験を交えた考察は手探りながらも力強く、まさに「個人的なことは政治的なこと」だ。それがあくまで楽しく、アートワークや記事に合わせて聴きたいプレイリストとリンクしている。ティーン特派員の取材による各界および各世代を代表する豪華ゲストの特別講義もある。編集委員長のタヴィちゃんを筆頭にほとんどのクリエイター陣が若い女の子なのでどうしてもフェミニズム色を帯びるが、もちろん男性もウェルカムだ。たとえばAsk a grown manのコーナー。16歳と13歳の娘を持つジャド・アパトウがティーンのお悩みに回答。




「自分を変えることなんてできない。変わったつもりでも、それは無理をしている自分でしかないんだ。君は君のままでパーフェクト、変わらなくたっていい。変えるんじゃなくて、上げるんだ」

彼が参照している70年代のこども番組のテーマソングはこれ。



The most important person in the whole wide world is you and you hardly even know you
(この広い世界で一番大切なのは君自身、君はそんな大切な自分のことをよく知らないみたい)
The most important person in the whole wide world is you come on we’ll show you
(この広い世界で一番大切なのは君自身、おいで、見せてあげるよ)
It’s all about the things you feel and do, because you’re the most important person in the world to you
(全ては君がどう感じ何をするかなんだ、だってこの広い世界で一番大切なのは君なんだから)

「ぼくはみんなと違う、だから孤独だ」「みんなができる事ができないんだ」と泣きわめく毛むくじゃらの異星人に、車椅子やデブや黒人の子供が「逆にみんなはあなたができることができないかもしれない」「自分がみんなのできることしかできなかったらそれはそれでいやじゃない?」「この世界をこんな風に見ることができるのはただ一人わたしだけ(ドヤァ」と語りかけるこの本編もいいなあ。アメリカやカナダの子どもたちは小さい頃からこういう教育を受ける。自信とプライドを持つのはもっとも重要なことだ。セルフ・リスペクトはナルシシズムとは全然違う。

わたしがVogueやELLEについて好きだったことは、豊富なカルチャー記事だった。数百万円のドレスや指輪はもしかしたら一生手に入らなかったとしても、宗教や絵画や本や映画、古いレコード、ほんとうの贅沢とは何かについて考える時間は四畳半アパートの台所にしゃがんだ中学生にも等しく与えられる。一流セレブや旬のモデルのインタビューも刺激的だった。彼女たちは美しいだけではなくて賢く、そして強い。そうでなければ生き残れない世界だ。今もマドンナの言葉を覚えている。「わたしはわたし自身に敬意を払っているから、身体や精神に悪いことはしない」。シンプルで毅然とした美学。でもこんな言葉は日本のティーンには届かない。若い女の子向けの雑誌が喧伝するもっとも価値のあることとはモテること、かわいくなること、痩せることである。小さな顔に二重のお目目、流行りの髪にカモシカ脚…。それを手に入れるためなら犠牲もいとわない。大好きな人に好かれたいのは当たり前。だけど好きでもない漠然としたヒトに好かれるため、社会の承認を得るために自分を変えようとして幸せになれた?自分の好きな服は?髪やメイクは?小説は?音楽は?場所は?自分はどうなの?10代はあまりに短く、世界から愛されることに腐心していたらロクな大人になれたもんじゃない。You're what you love. 自分を自分たらしめているのは、自分が何を愛しているかだ。自分の好きなものを愛そう。自分を愛そう。自分の人生は自分のもので、誰のものでもない。誰にも渡しちゃいけない。繰り返しそう説くRookieに出会えた現代のティーンたちはほんとうに恵まれているな。Webマガジンだから無料で、インターネットの接続さえあればどこの誰でも今すぐアクセスできる。Rookieはウェブサイトであり、コミュニティであり、社会現象である。そんな一大プロジェクトを10代の女の子たちが作ってしまうなんてすごいや。女の子は世界を変える!ガールズパワー万歳!…と言ったら恋人は「まるで男の子にはできないみたいな言い方だね」と不満気だったけれど。

RookieYearbookの第一号がこの度ついに日本語に翻訳されたらしい。尊敬する乙女ライターの山崎まどかさん@romanticaugogoの呼びかけで、若い世代のインターンが翻訳に関わったそうだ。これをきっかけに日本にもRookie的な運動が起きて、未来を変えてしまえばいい。

2015/09/12

BCPNPで永住権を取るの巻④Flag Pole失敗とリベンジ

前回までのお話はこちら→
BCPNPで永住権を取るの巻①ノミネートまで
BCPNPで永住権を取るの巻②Flag Pole
BCPNPで永住権を取る③ノミネート後にレイオフされた



…というわけでまたFlag Pole。通算3回目。病的な方向オンチのわたしを案じてまたまたセビくんが付き添いで来てくれましたー。


相変わらずアメリカ側のオフィサーはめちゃフレンドリーで、what's up YOみたいなノリでした。ちょっと待ってろと言われてなに待ちかと思ったら彼のオヤツ待ち…。黄色い付箋のブロック食べてるのかと思ったらリンゴだった(ド近眼)。前回と同じようにここでパスポートを見せて「Flag Poleするだけでアメリカに旅するわけではないよ」と書いた紙をもらいます。

さて、こっからが本番、カナダ側のオフィスへ。どいつもこいつもなんでこんな態度悪いの?!なぜか怒ってるんですけど、、、

結果から言うと、この日ワークパーミットはもらえませんでした。BCPNPのノミネーションの有効期限が半年間で、期限内にCICに永住権申請の書類を送るという約束はもちろん知っていたので、6月の終わりに書類送付を済ませていたのですが、書類送付を済ませたという証拠がなければノミネーション期限以降のワークは出さないと言われた。わたしの場合期限が9月15日で来週なので、手数料フルで払って一週間分のビザを取るのは賢明でないとのこと。この「証拠」はAORといって「書類受け取りました。これから審査に入ります」というCICから来る最初のメールのことで、このメールを受け取るには最低でも2ヶ月を要すっというのは常識なのだが、「こんな大事な書類の返事が2ヶ月も来ないのになんでCICに電話しないの?!家帰って電話しなよ」とマジでムカつく態度で言われる。「AORがないならダメ。ハイ、次の人!」と、他の書類には目も通さず門前払いされてもうた。エーン。

セビくんに丸一日付き合ってもらったし、一夏かかった就職活動が実ったということで帰りになにか美味しいものでも食べようと思ってたのに…くやしくて涙がこぼれた。スゴスゴ退散。

次の日さっそくCICコールセンター(これまた態度が悪い)に電話すると、「AORが来るのに2ヶ月以上かかるのは至って普通です。ビザ更新には必要ないはずですがボーダーオフィサーがそう言うんだったらまあそうなんじゃない?オンラインで申請すれば問題ないでしょう」との回答。なぜわざわざ遠い国境まで行くかというと、国境申請だとその場でビザが発行されるのに対し、オンライン申請だとなんと117日待ちとかなのです。その間に手持ちのビザが切れてもimplied statusといって引き続き古いビザと同じ条件で国内に滞在することができます。たとえばもともとワーク持っててオンラインでワーク申請した場合は結果が出るまで期限切れのビザで働き続けてもいいということ。しかしわたしの場合いま持ってるのがクローズドワークパーミットで前の職場限定のビザなので、implied statusになったところで滞在はできても働けないわけです。せっかく新しいところに雇ってもらったのに実際働けるのは3ヶ月半先とかさすがに気まずすぎる…。なんとかボーダーで更新したいところ。

ていうかPNP nominee (=LMIA exemption)のクローズドワークパーミット申請にAORが必要なんてどこに書いてあったよ?よく考えたらDocument Check List に書いてないのに持ってるわけないじゃんね。チェックリストには
If your nomination has expired, provide a copy of the acknowledgement letter confirming CIC received your permanent resident application before the nomination expired. 
って書いてある。それってつまりPNPの期限内ならa copy of the acknowledgement letter confirming CIC received your permanent resident applicationはいらないってことでは?


CIC公式webサイトにもこう書いてある。

International Mobility Program: Federal–provincial or territorial agreements [R204(c)] (LMIA exemption code T13)

>Foreign workers nominated by a province or territory
The duration of the work permit should be equivalent to the duration of the offer of employment. Where the offer of employment is for a “permanent duration”, the work permit will be issued for a maximum of two years.
 NOTE: It is not necessary for the foreign national’s application for permanent residence to have been received by CIC for the work permit to be issued, unless the nomination is expired. In that case, a copy of the acknowledgement letter confirming that CIC received a Provincial Nominee Program (PNP) permanent residence application should be provided with the work permit application. 

やっぱ必要ないやんけ! あのババア!これプリントアウトして持ってってリベンジしてやる!

とはいえ次回のFlag PoleまでにAORが出ればモメなくて済んで一番いいよなーと思いながら世界中の同志たちが共有するタイムラインを毎日チェックしていた。それによると本当に今日明日にでもメール来そうなかんじ。

と思っていたら!!!ノオオオオオオオ!なんと書類そっくり送り返されてきちゃったよ!申請料550ドルを、同封したクレジットカード情報をもとに請求したがdeclineだったとのこと。なんという凡ミス。あーあこれじゃAOR来るわけないっていうか、今度こそ本当にノミネーション切れちゃうから郵便の時間も考えると2日以内に送り返さなきゃってこと?!とパニくってわけもわからぬままダウンタウンのPNPオフィスに駆け込む。そうだ、有効期限が切れそうなら有効期限を延ばせば良いじゃないの。わたしは天才か。前からメールで事情を相談していた担当アドバイザーのパトリシオさんと直接お会いすることができた。そしたらあっさりノミネーション期限を半年間延長してくれた!「ボーダーオフィスのポリシーはよくわからんが、前回の理屈で言えばこれで最低でも半年はビザくれるはず。もしくは返送された書類を見せればそれが(失敗したとはいえ)CIC申請したっていう証拠になって一年以上出るかも?」とのこと。ダメもとで頼んでみてよかった。PNPオフィスはほんとに親切。

ビザ切れ目前の9月11日、今度こそワークパーミット持って帰るぞい!と気合いをいれてまたまた国境へ。またまたセビくんと。よく付き合ってくれるよね、ほんと。天使か!

この日はめずらしくオフィスが混んでました、というか急病人が出たらしくオフィサーがほぼ全員外に出てその老人の世話をしていた。多分天気がいいので働きたくないのだろう。あの意地悪ババアも外にいる…!ビザ業務もただ国境超えて旅する人たちも全部一人がさばいているのでかなり待たされた。待っている間に同じくFlag Poleするというオーストラリア人のカップルやフランス人のレズビアンとすっかり話し込み、特にフランス人ちゃんとセビくんはフランス語で意気投合しフェイスブック友達になっていた。いいなあフランス語話せて。彼は別に勉強したわけじゃなくて子供のころから自然にバイリンガルなのだ。カナダにはこういう人がけっこう多い。

ババアはまだ外で油売っているので、とっても感じのいいメガネお兄ちゃんが担当になった。ホッ。チェックリストには書いてなかったけど念のために持って行ったLetter of Employment(契約書みたいなもの)も求められた。何か文句を言われたら印籠のように差し出したろっと思っていた例のCICウェブサイトのプリントを、勢い余って必要書類と一緒に渡してしまったらしい。でもこれが功をなしてか、「CICの書類出したんだよね?」と軽く聞かれただけで、で、で、でたーーーーー!やっとビザが出ました。ちゃんと15ヶ月!これだけあれば永住権獲得までカバーできるはず。つぎに国境に来るときはPRカードもらえるときですかね。わくわく。あ、返送されたアプリケーションまた送らなきゃ…。

ながい、ながい戦いが終わりました。今度こそもうダメかと思ったけど今度もまたなんとか切り抜けたぜ。



約80日ぶりに仕事に戻ります!チャンスを与えてくれた会社に感謝。ずっと支えてくれたセビくんに感謝。来年の夏もまたカナダにいられるぞ。

2015/09/09

Something about summer

なにげに初めてPNEに行ってきた。バンクーバー唯一の遊園地で、夏期限定オープン。最終日に滑り込み。


The Fair at PNE (毎年8月下旬から9月始めまでオープン)
2901 E Hastings Street
Vancouver, BC




まさに『アドベンチャーランドへようこそ』の世界だ!





ニコ彼女のナディーン(あんなに嫌いだったのに最近けっこう仲良い)、
ニコ、クレマン
ちひろ、シャルル
恋人のセビくんはバイトのため欠席

映画では射的や輪投げは細工がしてあって絶対に景品が取れないという設定だったが、ここはけっこう誰でも取れるらしく巨大なぬいぐるみを背負って歩いてる人も多かった。一番豪華な賞品はiPadで、これもけっこうゲットしてる人を見かけた。


この、不安定なはしごを昇るチャレンジに男子たちがものすごくムキになっていた。ほとんどのゲームは一回5ドルで、まあ普通に高い上に勝ったところでもらえるのはヌイグルミだし、あんま射的とか得意じゃないわたしは全く興味が湧かなかったけど、お祭りっていうのはそういう問題じゃねえと言ってあっという間に一人100ドルくらい使っちゃったうちのルームメイトたちはきっと正しい。

数え切れないほどの食べ物の屋台も出ている。ポップコーンにコーンドッグ、綿菓子にアイスクリーム、レモネード。どの店もレトロな装飾がかわいい。




↑これはチーズケーキやショートケーキを揚げたもの屋。さすがにカナダ人も引いていた。

BBQ Rib選手権的な、有名店のリブ食べ比べができる企画があったのでわれらはそこのリブを食べた。お酒が飲めるスペースも二カ所あった。当然ビールいっとくでしょ。

アトラクションはけっこう本格的なのだがとにかく高い。14歳以上の入園料$16(オンライン割引$13)に加えて、乗り物チケットが一枚$1.50。ジェットコースター類は7枚消費。乗り物乗り放題が$42.75(オンライン割引$39.75)。けっこうお金かかるねー。まあ観光地っすからね。みんな飲酒していたので回転系は気分が悪くなり、ジェットコースター(英語ではRoller Coastersだよ)系に専念。


今日で最後の遊園地。若い子が目だつバイトちゃんたちも、この日がお仕事最終日。翌日9月8日は新学期の始まりで、ああ本当に夏が終わるんだなあという雰囲気が、レトロな風景とあいまってどこかせつない。

暗くなってから、わたしのことを好きだと言うルームメイトと二人で高いところでクルクル回るのに乗った。思いのほかこわくて目をつぶった。この夏の半分は彼でできている。


肌寒くなったのでみんなでおうちに帰ってBBQ。BBQも今年はもう最後かなあ。

暑くなってから二ヶ月以上も仕事ができなかったのでまるまる遊んで暮らした。ビザのことで悩みすぎていつも上の空だったけど、宝物の瞬間もたくさんあったように思う。日本でもカナダでも、夏は人を狂わせる。神がかったモーメント。あれはなんだったんだろう。真夏の雨のように、18、9が蒸発して、もう戻らない。

バンクーバーでは近年でも珍しいほどの乾いた夏で、厳しい節水義務が出た。噴水は止まり、芝生は枯れた。

今年のテーマソングはこれ。


Charli XCX - Boom Clap
(あっ、リリースは去年だ、、、)




























夏が終わってもカナダにいられますように。来年の夏もまたカナダにいられますように。

2015/09/05

BCPNPで永住権を取る③ノミネート後にレイオフされた

前回までのお話はこちら→
BCPNPで永住権を取るの巻①ノミネートまで
BCPNPで永住権を取るの巻②Flag Pole



2015年4月、半年間という異例の早さで州審査をパスし、ほぼ確実とされていた永住権が仕事のレイオフっつーか事実上の解雇によりキャンセルの危機。ガッデメッ!!!わたしが応募したBCPNP Entry level and semi skilled worker programはスポンサー企業に依存したプログラムなので、所属している会社を離れると原則無効となるのです。応募時点で既に9ヶ月以上連続フルタイム勤務していることが条件で、申請中はもちろんのこと最終的にPRカードが出るまでは絶対に仕事を辞められないという約束。なのに、ああそれなのに6月にバイト先の店舗が売却されて店長含む全メンバーがあっさりクビになりました。フランチャイズの一店舗が別オーナーに切り替わっただけで会社自体はまだあるので、単純に別店舗に転勤させてよっと言ったのに、確実にめんどくさがってるだけの新しいディストリクトマネージャーが「もう人たくさんいるからいらない」って、こんなん許されていいの?!特にわたしはPNPに提出した無期限の雇用契約書があるんでクビにできないはずなんですけど、、、ビザの都合上転職はできないので誰か辞めて空きが出るまでバケーション扱いにしてくださいと言っても取り合ってもらえず、一方的に退職金出されておしまい。2年間真面目に働いたのにこんな理不尽があるかい。訴訟とかしたら勝てそう。でももうそんな気力もない…こんなときに移民カウンセラーがいたらなあ…トホホ。手続きは90パーセント終了してあとはだらだらバイトして待てばついに永住権取得、という最終段階での出来事。9ヶ月フルタイムのスケジュールを確保するために週6で働いたことも、去年の夏缶詰で勉強したことも、気が遠くなるような量の書類作成も、申請料も待ち時間も全部水の泡に?!しかも制度変わってもう飲食店じゃ新規ビザとれないよ?!っと超パニクったけど、とりあえずPNPオフィスに事の顛末を正直に報告。PNPのスタッフさんはめっちゃ優しいです。最近Robson x Seymoreに移転したオフィスを直接訪ねても相談にのってくれるし、電話でもいいし、メールもすぐ答えてくれる。

大昔の写真。同じ店なのに急にメンバー総入れ替えで
常連さんたちビックリしただろうな…

PNPからの指示は「2ヶ月以内に、ほぼ同じ職種でかつオリジナルの条件を満たす新しい雇用主を見つければ問題なし。再度書類審査が必要だがLMIA(LMO)は免除、審査通れば新しいワークパーミットのサポートレター出します」とのこと。即ノミネートキャンセルにはならないということで一安心。まあわたしが悪いんじゃないし、これくらいは配慮してくれてもいいよね。解雇(離職)の際に雇用主から発行されるRecord of Employmentという、契約解除の理由や雇用期間、お給料の状況などを書いた紙を提出するようにも言われました。

さて、職探し。一番簡単なのはバイトしていた店で新しいオーナーのもとで働くことだけど、新しいオーナーは移民で、身内しか雇わないと言う。もう最悪最悪最悪。ていうか実は前の店長も外国人で自分の国の人しか雇わなくて、思いっきり差別されて本当に悔しかったんだよなあ。同僚のカナダ人はみんな辞めて(辞めさせられて)、専属契約があるわたしだけが残った。シフトを減らされたり、給料が上がらなかったり、全部の仕事を押し付けられたり、外国語でからかわれたり。カナダ人に差別されたことなんか今まで一度もなかったのに、どうやら本当にエグい差別をするのはマイノリティのほうみたいです。「同胞」意識がすごく強くて排他的なのだ。カナダの移民法が最近急に厳しくなったのはこのせい。アルバータ州かなんかのマクドナルドのオーナーが外国人のビザをスポンサーしまくって、彼らのシフトを確保するためにカナダ人を追い出した事件がきっかけだった。逆にカナダ人が「うちはカナダ人しか雇いません」とか言ったらたぶん猛烈に叩かれると思うんだけど、外国人は平気でこういう差別をやっちゃう。たとえば寿司屋で日本人の寿司職人を優先的に雇用するのとかはまあアリかなと思うんですが、そうじゃなくてただのファストフードだからね。移民が一人いて、そのうち昇進して、同じ国の家族や友達だけ雇うからあっという間に企業を丸ごと乗っ取っちゃうケースも。日本もどんどん移民招こうとか言ってる人もいるらしいけど、これが現実ですわ。


何もかも納得いかないけど前の仕事にしがみついてたら前に進めないから、新しい仕事を探すことに。2年前は履歴書も見せず面接もなしで完全にコネでワーク出してもらったので、真っ当なシューカツほんと久しぶりです。履歴書刷ってドサ回り。もともとファストフード枠でPNP申請してしまったので似たような給料の似たようなポジション縛り。一番最初にワーホリで来たときよりは幾分か英語も上達したし、カナダでの職歴もあったのでけっこうスムーズでした。が、しかし、永住権申請の話を出すと途端にめんどくさがられ、書類は一切出さないだとか、明日からでも働き始められないなら無理だとか、そもそも会社がPNPの条件に合わないなど言われ大苦戦。2ヶ月の期限ギリッギリで拾ってもらえたのは結局またコネのおかげでした。ホッ。元ルームメイトやらその仲間たちが働いてるところを紹介してもらった。昔シェアハウスによく遊びにきてたドイツ人のトムくんはいつのまにか出世しまくって本社勤務になっていた。やっぱりこんな面倒な書類作成はコネでもないとやってもらえないか…。前にもどこかに書いたけど、こちらは日本以上にコネ社会です。コネって言うとなんかズルいみたいだから人望と呼ぼうか。わたしゃ3年前エージェントもホストファミリーもなしで完全単身でカナダに来て、ゼロから自分で人脈を築いてきたっぺよ!しかも英語全然喋れなかったのに英語しか喋ってこなかったっぺよ。しばらく住んでればまあ知り合いは増えるものなので、とにかく「困ってます!」と積極的に発信していくとけっこう助けてもらえるものなのです。意外とみんなおせっかい。

8月の始めに店長と顔合わせがあって即採用されたはいいが、トロント本社にいるトムくんから書類もらえるまでになんと一ヶ月もかかった。たいした内容じゃないのに…。電話やメールで何回催促しても全然レスポンスがないからなんかもうこの話流れちゃったのかな?みたいな雰囲気もあって、一応保険で別の面接にも行って、やっぱり断られて、不安で不安で頭おかしくなりそうだった。何度もお店を訪れてやっと直属の上司と会うことができ、8月31日22時頃全部書類が揃って速攻PNPにメール。翌朝メールを開いたらなんともう返事が来てました。早ッ!!「新しい会社もPNPの基準を満たしているようなのでサポートレターを添付します。これを持って国境へGO」だって。わいわいわーい!なのでFlag Pole二回目。ついに働き始められるぞー!

と、信じてたあの頃は幸せでした。

(…次回へ続く)

2015/08/06

Amazon.jpが安い

3年前に日本の実家を去った時は荷物が多かったのと、ワーホリビザが切れるまでの一年間日本語で思考することは一切やめようと思い、まさか余生をカナダで過ごすとは思わなかったのでほとんど本を持って来なかった。これは完全な誤算で、ブックオフ バンクーバー店が2012年6月に閉店してからというもののわたしは日本の書籍に死ぬほど飢えていた。VPLバンクーバー公立図書館にはけっこう和書があるのだが、読書の愉しみの70パーセントは自分の本棚に本を並べて眺める時間でできていると思うのでどうしても所有したい。しかし本は重いので日本から取り寄せたらめちゃくちゃ高いんだろうな…と調べもせずに何年も諦めていた。転送サービスなんかも少しチェックしたんだが案の定のお値段だったので、そっ閉じ。電子書籍は品揃えが悲惨だし。

…て、Amazon.jpの海外配送がこんなに安いなんてどうして誰も教えてくれなかったんだ!



(詳細こちら Amazon ヘルプ)
日本のアカウントがそのまま使えるので住所を追加するだけ、簡単。しかも信じがたいくらい早い。なんと最短二日ほどで届く。Amazon.caで買い物するとカナダ国内でもだいたい一週間以上かかるのになんで日本からの段ボールが数日で届くのか全くわけがわからない。

ただし配送対象商品は全てっというわけにはいかない。わたしは本しか注文したことないのですが、本・DVDのほとんどと、一部のキッチン用品なんかも海外配送してくれるみたいです。これとか。なんだー割烹着は売ってないのか、欲しいのに。

星野 押し寿司器 おにぎり型 3個取り
星野工業
売り上げランキング: 388,387


一部マーケットプレイス商品やアダルト商品については海外配送対象外。ずーーーっと欲しかったDVD、劇場版テレクラキャノンボール2013は今度トランジットでバンクーバーに寄るお友達に持って来てもらうことになっている。

配送一件ごとに500円かかるので、注文はなるべくまとめて。月に一万円くらいは贅沢してもいいよね?最近買った本のリストはこちら。


第一便(配送済み)
木嶋佳苗『礼賛』
少年アヤ『少年アヤちゃん焦心日記』
山崎まどか『オリーブ少女ライフ』
鈴木涼美『身体を売ったらサヨウナラ』
雨宮まみ『女子をこじらせて』
清岡智比古『フラ語入門、わかりやすいにもホドがある!』
久松 健一『暗記本位 仏検対応5・4・3級フランス語動詞活用表』

第二便(出荷済み、配送待ち)
山崎 まどか、長谷川 町蔵『ヤング・アダルトU.S.A. 』
少年アヤ『尼のような子』
北原みのり『毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』
長谷川町蔵『聴くシネマ×観るロック』
ライムスター宇田丸『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル “神回”傑作選 Vol.1 』


STUDIO VOICEは海外配送対象外だった。10代の頃一番影響を受けた雑誌の復刊号なので手に入らず残念。あとは最新のサブカル本が中心。ミーハーで悪かったわね。婚活殺人の木嶋佳苗が異様に気になる今日このごろ。殺人犯の自伝でも『絶歌』は別にってかんじ。『アラサーちゃん』『アル中ワンダーランド』『奥田民生になりたいボーイ出会う男すべて狂わせるガール』などはギリギリで選考漏れ。

挫折しまくっているフランス語の参考書は、やはり日本語のものが理解しやすい。言葉の性質でいったらむしろ英語→フランス語のほうが勉強しやすい気がするんだけど、英語の参考書は白黒刷りで構成も単調で本当に退屈なのだ。工夫がないんだよね。あれ読了できる人いんのかな。ただし辞書だけは英仏辞書のほうが使いやすい。



実家の本棚に持っている本はもう取り返すことはできないかもしれないけど、心のどこかで「持っている」と思ってしまってどうしても買い直すことができない。絶版を必死に古本屋やオークションで探したものとかサイン本だけでもいつかまた会えるといいが…。大学で専攻していた政治学の本たちは英語版があれば少しずつ集めて読み直していこうと思う。ハンナ・アーレントやベンヤミン、スラヴォイ・ジジェク。そういえば小説ってほとんど読まなくなったなあ。マンガはもともとそんなに興味がない。手塚治虫と赤塚不二夫と根本敬だけあればよい。ダニエル・クロウズも!唐突に安野モヨコ『ハッピーマニア』も。

お互いのことを知り尽くしたつもりのボーイフレンドだって、日本のサブカル趣味は知らない。この先英語やフランス語で説明する事もきっと出来ないと思う。同じように彼にもわたしが知り得ない世界を持っているんだろうか。

英語だけ話して生きて行こうと決めてから長い間日本語アレルギーがひどかったけど、今は日本語でしか表現できない日本の世界はそのまま大切にしたいとやっと思えるようになった。違う言語や文化を完璧に翻訳することなんかきっと無理だ。だから言語を勉強して原語のまま理解していくしかない。