2014/04/27

【近況】Bad Girl Gone Good

春。シェアハウスに新しい仲間が増えた。旅人ルシアンが次の目的地に旅立ち、代わりに越してきたアレクサスは紫の髪でタトゥーだらけ。だけどこの春から看護学校に通う学生。こっちではお医者さんや看護士さんでもファンキーな外見の人がけっこう多い。それから大家ニコの親友のトキオとガールフレンドのハナヨ、最近よくうちで見かけるなーと思ったらいつのまにか正式にうちに住むことになっていたらしい笑。二人は日本語が話せる。日本語でしか言えないことと、英語でしか言えないことがあるので、両方ミックスして話せるとかなり快適。ずっと避けていたのでこっちで日系の人と友達になるのは初めてだ。彼らが飼っているセキセイインコのLadyとGaga(笑)、ニコが溺愛するフェレットのリマ、それから友達のジェンから我が家で預かっているワンコのジャスパーを庭で遊ばせて動物園状態。8人と4匹、毎日がお祭り騒ぎだ。



よく見るとバンクーバーにもけっこう桜がある。ていうかうちの庭にもある。公園のように広いこの庭に一目惚れしてから2年が経った。


一目惚れといえば、お互い一目惚れでいきなり恋人ができた。彼もだいたいいつもうちにいるので本当ににぎやか。


なんと彼、以前わたしの部屋に住んでいた元住人なのだ。(「どこに住んでるの?え?そこぼく昔住んでたよ!え、ニコの隣の部屋?!同じ部屋だ!」)当然わたしの兄のニコやちゃんぴーとは友達で、彼らとクラブで遊んでいたら偶然彼もそこに来ていて紹介された。わたしの部屋=元自分の部屋に泊まって目覚めると毎回一瞬混乱するらしい。もっと不思議なのは、おととしくらいにニコが突然「至急ちいの部屋のベッドが必要になった。代わりは今日中に手配する」と言ってベッドを取り上げた事件のこと。ベッド交換ってなんやねんと思いながら当時特に理由は聞かなかったのだが、実はわたしが寝ていたベッドは彼のもので、引越しの時に必要なくなったからうちに置いていったものらしい。それで再度引越しの際にまた必要になったので取り返したのだそう。彼は今もそのベッドを使っていて、わたしは週に二回ほどはその元自分の部屋にあったベッドで寝ている。世にも奇妙な物語。
ちなみに兄たちは例によって例の如く、わたしを取られて完全におもしろくない様子だ笑。

彼を好きになった理由のひとつが左腕の美しいタトゥーである(めちゃくちゃ自慢したいんだけど諸事情により写真の掲載は見送ることにした)。デザインはアーティストさんと一緒に考えた完全なオリジナルで、彼が好きなビデオゲームにちなんだモチーフを組み合わせたものだ。元ネタはメトロイドしかわからない…。タトゥーってこんなに繊細な線も表現できるんだなー。全体は白黒だが一箇所だけごく薄い青が入っていて、自前の浮き出た血管にグラデーションで繋がるようになっている。わたしもずっとタトゥーが欲しかったけど、これより素敵なものになる気がしなくてなんだか気持ちが萎えてしまった。

あ、彼セビ君っていうの。もともと日本のアニメで馴染みがあったせいもあり、すごい勢いで日本語を習得している。自ら「セバスチャンチャン…セバスチャンクン…セビクン!」とニックネームを考案したのでびっくりした。わたしのことはちゃんと日本語でチヒロチャンと呼んでくれる。ビデオゲームに日本アニメ、そう彼はオタクなのだ。メガネにバンダナにアニメのTシャツにリュックという一昔前のテンプレート的秋葉コーディネートなのに明らかなイケメンオーラがビンビン出ていて、た…たまらん…。メガネ外して亜麻色の長髪が顔にかかり、上裸で赤ワイン片手にモナムール(※フランス語ペラペラ)とか囁きつつ抱き寄せられたらマンガのように赤くなっちゃう。こんなかわいい人がわたしのこと好きなんてありえねー。神様サンキュー!

ちゃんとした交際をするのはわたしの恋愛の時間軸で言ったらものすごく久しぶりだ。手をつないで歩いたり、FBにお互いの写真を投稿したり、お互いの友達を紹介したり、彼の家族とご飯を食べたり、健康で健全で秘密じゃない関係。束の間の安らぎ。刺激だけを求めてやみくもに走ってきて、ふと立ち止まったら傷だらけだったことに気づく。幼い頃に経験できなかった反抗期をはしかのようにこじらせて、悪い子ぶっていたら本当に悪い子になってしまった。だけど根は真面目なままだからバックラッシュの嫌悪感がすごくて、自罰的になって、心が潰れかけた矢先の突然の出会いだった。今は彼の愛情をいっぱい受けてリハビリ中。「君の魂はそんなに簡単に汚れたりはしない」と彼は言う。


健康オタクの彼の影響で身体も健康になってきた。最近はキヌアという南米の穀物に凝ってこればかり食べている。米や麺より軽くサラサラと食べられて、プチプチ食感が楽しい。信じられないくらい栄養があるらしい。相変わらず毎日自炊はしているのだが栄養について考えたことはほとんどなかった。「栄養のあるもの食べれば徹夜で遊んでも疲れないよ」と一生懸命工夫してわたしを説得しようとするきみ。いつだって自分より周りのほうがわたしのことを心配している。


誰かの顔色を伺って自分を殺すのをやめ、はっきり言いたいことを言うようになったのは英語を喋るようになってからだと思う。そのせいで心配をかけたことも傷つけたことも傷ついたこともあったけど、結果的には自分で選択して自分が満足できる環境を手に入れたことを誇りに思う。だからそれってちっとも悪いことじゃないのに、やっぱり悪いことみたいに思えて、悪いことは気持ちがいいからもっと悪くなりたくなる。悪い子ぶりっこ卒業しなくちゃ…(こんな事を26にもなって言ってるのが本当に痛いのはわたしが一番よくわかっているつもりだ)。

ビザ切れ訪日から無事カナダに戻ってそろそろ一年が経つ。わたしにとってはカナダが「帰る」場所で、日本は「行く」場所だ。自分で決めた自分の居場所。ずいぶん無茶もしたけれど帰って来られて本当によかった。今持っている就労ビザが二年間の期限つきなのでまたまたこれをどう延長するか気を揉む日々が待っている。彼や誰か他のカナダ人と結婚→永住権取得というのはまずありえないだろう。こんなに大切なイシューを恋愛や結婚といったギャンブルに任せるわけにはいかないのだ。

いいことも悪い事もそう長くは続かない。泡のように消えてしまう今を抱きしめる。